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グレン・グールド 4  [テレビ・ラジオ]

NHK教育テレビの 『グレン・グールド 鍵盤のエクスタシー』 の4回目は

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『最後のゴールドベルク』 でした。

グールドは バッハのゴールドベルクに始まり ゴールドベルクで終わった きわめて稀有な音楽家人生を歩んだ人なのです。
映像として残っている演奏はレコードのものではないのですが
デビューの頃のゴールドベルクは
 


テンポが速く タッチも鋭く 一音一音が粒立ち 若者らしい演奏になっています。
それに比べ死の間際の演奏では
 


テンポも緩やかになり 一音一音を確かめるように弾いています。

この番組の第3回で追求したテーマの エキセントリックが初めのゴールドベルクの演奏であり あとの演奏がロマンティックであるともいえます。

彼はゴールドベルクを再演するに当たって 「前の演奏も良かったのだが 30の変奏が それぞれ自分勝手に振舞っていた」 と言っています。
そして コンサート活動をやめて孤独な生活の中で音楽と向き合い グールドは 
 
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と言う境地に立っていました。
そしてこの番組の案内人 宮澤淳一氏はこの演奏を 「統一感があり 崇高さすら感じさせる演奏」 と言っています。
そしてグールドは 孤高の作曲バッハの人生に自分の人生をなぞらえて生きてきたのではないかと推論しています。

グールド自身も
 
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バッハが一番好きだと言っています。

「孤高の作曲家バッハ」の孤高の意味合いを 私はこの番組で初めて知りました。
それはバッハの時代 実はフーガなどの技法のいくつもの旋律を絡める手法は古臭くなっていたのですが バッハが時代に抗してそれにこだわり続けた姿勢そのものが孤高だったのです。
時代から隔絶した世界で作曲をしたバッハと 社会から離れて音楽を模索するグールド。

グールドが何十回も
 
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夏目漱石の 『草枕』 を読んでいたこともこの番組で初めて知りました。
彼が 『草枕』 の一部を
 
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ラジオで朗読する声も残っています。

 のどかな春の日を鳴き尽くし、鳴きあかし、また鳴き暮らさなければ気が済まんと見える。
 その上どこまでも登って行く、いつまでも登って行く。
 雲雀はきっと雲の中で死ぬに相違ない。
 登り詰めた揚句は、流れて雲に入って、漂うているうちに形は消えてなくなって、
 ただ声だけが空の裡に残るのかも知れない。

彼は 『草枕』 の世間から離れて芸術を模索するこの主人公を心のよりどころにしていたと言われています。

ゴールドベルクの第26変奏から最後のアリアまでの映像です。
 


演奏を終わり 祈るように手を置き がっくりと頭をたれるグールドの姿が心に残りました。


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アヨアン・イゴカー

一人の作曲家を追い求める姿勢には、静かな、しかし力強い人間の意志を感じることができます。

by アヨアン・イゴカー (2009-09-02 08:42) 

kurakichi

アヨアン・イゴカー さん

グールドは強い意志を貫き通した人なのですね。

by kurakichi (2009-09-02 10:59) 

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