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シェーンベルクを聴きに行く  [MUSIC]

11月1日に近藤伸子さんのピアノリサイタルを聴きに行ってきました。
今年の1月8日のイギリス組曲を聴きに行ったのに引き続き私としては3回目です。
今回は近藤さんのライフワークとしている 20世紀のピアノ曲の5回目で 
 
101112_001.jpg


シェーンベルクの夕べでした。

20世紀はクラシック音楽と呼ばれる領域でも その表現方法が劇的に変化しました。
21世紀になった今 20世紀の音楽を俯瞰的に見てみる近藤さんのこの取り組みはとても貴重なものだと思います。
この取り組みの前回は2008年10月31日の 追悼シュトックハウゼン でした。

シェーンベルクはもう40年も前に 月に憑かれたピエロ を一回聴いただけで私にはほとんどなじみがありません。
この日のプルグラムは
一部
 3つのピアノ曲 Drei Klaviestüke Op.11 (1909)
 6つのピアノ商品 Sechs Kleine Klaviestüke Op.19 (1911)
 5つのピアノ曲 Fünf Klaviestüke Op.23 (1920-3)
 ピアノ組曲 Suite für Klavier OP.25 (1921-3)
 ピアノ曲 Klaviestüke Op.33a/33b (1928/1931)
二部
 ファンタジー Phantasy for Violin with Piano Accompaniment Op.47 (1949)
 浄夜(シュトイアマン編曲トリオ版) Verklärte Nacht Op.4 (1949) 
                          bearbeitet von E. Steuermann
でした。
シェーンベルクの全体像を知るにはwikipediaを見ていただくのが早いと思います。
彼は新しい音楽表現として和声の束縛を離れ12音技法という作曲法を作りました。
この日のプログラムの4番目ピアノ組曲 Suite für Klavier OP.25 をグールドが演奏しているものがありました。
 


基本的に楽しむ音楽ではないのでつまらないと思われる方も多いと思います。
音楽も絵画もそれを聴く者や観る者にとっては楽しむための物であるという一面もありますが 作者の側からすれば自己表現ということの方が第一義になっています。
そしてその表現は受け取り側が理解できるであろうとするある枠組みの中での表現になるわけなのですが その枠は常に実験的に変形され拡大されてきています。
12音技法もその一つということがいえます。

クラシック音楽ではないのですがジャズにおいてもその表現方法への挑戦が常に行われていて 特にバップ以降のマイルスを中心とする活動にその一端を見ることができます。
ジャズにおいては和声はコード進行で規定されているものでしたが その呪縛から一歩踏み出したのが
 


So What でした。
これがレコーディングされた時マイルスがメンバーに提示した楽譜にはコード名は書かれていなく いくつかの音階(モード)が書かれていました。
それを見たメンバーの一人がマイルスに これだけですか? と聞いたところマイルスが So What? それがどうした と答えたことが この曲の題名になっています。
これ以後ジャズの一部はさらに調性の無いフリージャズへ突き進んでいきます。
そういった発展面においてクラシックとジャズには共通する部分があります。
しかしジャズがエモーショナルを基本に置いたことに対してクラシックは理論的思考に基本を置いたことに大きな違いがありました。
それは演奏形態がジャズはその場における即興であることに対しクラシックは譜面に書かれ誰かが再現する音楽であるという違いにあると思われます。

さて話がそれましたが近藤伸子さんの演奏に戻ります。
シェーンベルクのピアノ曲は小品が多く あっという間に終わってしまいそれほど大きな印象が残るものではありませんでした。
良い絵画を観るときに何回も何回も視線を這わせて絵画から自分なりの印象や意味といったものを汲み取ろうとするように それは本来の音楽の聴き方からは逸脱することですが シェーンベルクの音楽は何回も何回も途中であっても始めに戻って聴きなおす そんな聴き方をしないといけないような音楽のような気がしました。

この日一番印象に残ったのは プログラムの最後の曲 浄夜(シュトイアマン編曲トリオ版) Verklärte Nacht Op.4 (1949) bearbeitet von E. Steuermann でした。
この演奏はヴァイオリン(佐藤まどか)とチェロ(菊池知也)とのトリオに編曲されたもので 作品番号でもわかるように初期の作品であるため メロディーも他の作品に比べてずいぶんと聴きやすいものでした。
しかし この作品はリヒャルト・デーメルの詩を基にしていて その詩は他の男の子を宿した女との森の中での逢引のようすが書かれている物で テーマも重くとても暗い印象でした。
 
ちなみにそれは 弦楽六重奏に編曲されたものですが
 


このような曲です。
確かに暗い曲なのですが美しい響きを持っています。

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コメント 20

夏炉冬扇

お早うございます。
いいお時間お過ごしになられました。やっぱり文化の都。
by 夏炉冬扇 (2010-11-12 07:58) 

あさこ

第一印象だけで、好き嫌いを決めてしまうと、
世界って広がりませんよね。
最初はとっつきにくくても、何度か繰り返すと、
ああ、好きだなと思えることってあります。
いつも新しい耳と目を持っていたいです。

by あさこ (2010-11-12 09:39) 

kurakichi

夏炉冬扇 さん

たまにこういった時間をすごすのが私にとって息抜きになっています。

by kurakichi (2010-11-12 10:50) 

kurakichi

あさこ さん

水は低きに流れる。
身近に楽しいものがあったらそちらに向かってしまいます。
時にはそうでないものに目を向けることが必要だと思います。

by kurakichi (2010-11-12 10:54) 

kazenotomo

弦楽六重奏に編曲された「浄夜」がなにやら僕の心に
すーっと入ってきました。

by kazenotomo (2010-11-12 11:24) 

Cazz

ピアノ少し習ってたことがあるので
こんなのとても弾けないとおもいつつ
聞いていました。楽譜あるんでしょうか・・・
音が塊のようにつぎつぎに
こちらに投げつけられてくるようです。

by Cazz (2010-11-12 12:36) 

Mogu

芸術の秋ですね~♪
♪♪♪~

by Mogu (2010-11-12 13:33) 

sig

今回の記事で、kurakichiさんのこれまでの記事から漂う芸術的・創造的センスの源泉に触れたようで、納得です。私はどうしても音楽を映像的に聞く癖があり、その意味で、分からないながらもクラシックもモダンもみんな好きです。
来週19日(金)午後2時より国分寺市立恋ヶ窪公民館で、自作映画史ビデオ「20世紀・映画の時代」の上映会を開かせていただきます。
by sig (2010-11-12 16:01) 

MIKE

してみれば、クラシックには「再現性」が有る
一方、ジャズって「偶発的」なシロモノかも
しれない - 拝読してやっと思い当たったデス・・
by MIKE (2010-11-12 17:06) 

kurakichi

kazenotomo さん

浄夜は重厚でありながら心地よい緩急があって心に沁みこんできますね。

by kurakichi (2010-11-12 17:14) 

kurakichi

Cazz さん

近藤伸子さんのリサイタルには必ず一枚目の写真に写っているような彼女自身が書いた解説書が付きます。
私など素人でもなんとなく理解できるように書かれたその解説の中に楽譜の一部が載っています。

by kurakichi (2010-11-12 17:23) 

kurakichi

Mogu さん

やはりクラシックのコンサートは秋から冬にかけての方が気分ですね。

by kurakichi (2010-11-12 17:25) 

kurakichi

sig さん

私はただ好きなもの気になったことなどを記事にしているだけで 恐縮です。
19日はぜひお伺いしたいと考えています。

by kurakichi (2010-11-12 17:30) 

kurakichi

MIKE さん

MIKEさんのフィールドのスウィングジャズでもスコアはあっても実際の演奏ではそれを乗り越える偶然性がやはり面白いのではないでしょうか。
作曲者と演奏者の関係はクラシックでもジャズでも存在するわけですが そのウエイトというか濃度といったらいいか その違いが大きいのではないかと思います。

by kurakichi (2010-11-12 17:39) 

そらへい

私はシェーンベルクと聞くと
なんとなくオーネット・コールマンを連想してしまいます。
ぜんぜん違うのでしょうが、
どちらも少ししか聞いたことがありません。
by そらへい (2010-11-12 20:39) 

kurakichi

そらへい さん

私もそれほど詳しくありませんが 二人とも音楽の未知の部分に突き進んで行った点が共通していますね。

by kurakichi (2010-11-13 01:29) 

sig

19日の件はたまたまそういういきさつになったものですから。どうぞご無理なさらないように。
でも、お会いできればうれしいです。
by sig (2010-11-13 15:57) 

mwainfo

12音技法、モードジャズ、ジョンケージの「沈黙の楽曲」など、幅広い見識を持たないと理解しにくい面もあります。
by mwainfo (2010-11-13 16:13) 

kurakichi

19日は場所も近いので伺いたいと思っています。

by kurakichi (2010-11-14 10:48) 

kurakichi

mwainfo さん

難しいことばかりですが どれも20世紀の音楽に大きな影響を与えていますね。

by kurakichi (2010-11-14 10:51) 

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